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子どもを勇気づける方法 ~はげまし名人 清瀬灰二「風が強く吹いている」~

風が強く吹いている

 今世の中は、「先行き不透明な時代」と言われています。
 誰しもが、将来を楽観的に見られなくなっているようです。
 子どもたちも、大人の雰囲気を敏感に感じ取っているのか、少し元気がないような気がします。

 今もそうであるように、未来も課題がいっぱいあるでしょう。
 何年たっても「先行きは不透明」のままでしょう。
 でも、変わらないことが一つあります。それは…
 
 未来に挑み、一歩を踏み出さなくては何も始まらないということです。

 そのためには、6つの「気」が必要です。

 それは、「勇気」「元気」「本気」「根気」「やる気」「活気」です。
 そして、その一歩目は「勇気」です。

 さあ、みなさんも子どもを勇気づける「はげまし名人」になりましょう。
 今回は、「風が強く吹いている」清瀬灰二の言葉から考えてみます。




いいか、過去や評判が走るんじゃない。
いまのきみ自身が走るんだ。
惑わされるな。振り向くな。もっと強くなれ。

君を信じる。




 「風が強く吹いている」は、三浦しをんにさんよる箱根駅伝を舞台にした小説です。

 物語の概略を説明しますと…
 天才ランナー蔵原走(かける)と住む個性豊かな9人の大学生が、ボロアパート竹青荘を舞台に箱根駅伝で頂点を目指す物語です。
 とはいえ…「駅伝って何?」と質問するほどの素人集団による無謀なチャレンジですから、多くの紆余曲折があるわけです。襷をつなぐことを通じて、若者が「走る」「生きる」、そして「強くなる」姿を見せてくれる青春ど真ん中の物語です。
 
 冒頭の言葉は、チームのリーダー、清瀬灰二(ハイジ)が、悩める天才ランナー蔵原走に語った言葉です。
 走は、ランナーとしての能力の高さゆえに孤立、ついには「暴力事件」で追放されるという過去をもっています。
 しかしハイジは決して走の過去を聞こうとしないのです。

「ハイジさん、知っているんですよね?俺の高校時代の評判を」
「とても速いってことか」
「それはいいほうの評判。俺が言っているのは…」

清瀬は走の言葉をさえぎった。
「いいか、過去や評判が走るんじゃない。いまのきみ自身が走るんだ。
惑わされるな。振り向くな。もっと強くなれ。

君を信じる。」


 はげまし名人は、はげます技術と理論を持っている人です。
 でも、それだけではいけません。はげます前に必要な用件があります。その一つが互いの「信頼」です。


 信頼とは、「根拠なく無条件に信じること」です。


 ハイジは、箱根を目指すランナー集団の指導者に加え、竹青荘の「寮母」としても力を尽くしています。
 毎日の食事の世話はもちろんのこと、「寝坊して講義に遅れそうな者がいれば叩き起こす」「正月帰省ができない者にお節料理を作りなぐさめる」…まるで母親のように仲間や後輩たちに接しています。
 だからこそ、竹青荘の面々は、ハイジの無謀ともいえる箱根挑戦を受け入れるのです。
 まさに、相互信頼を前提としたチャレンジと言えます。

 一方…
 信頼に、「条件」が付けば、相手に不信感が残ります。
 それは「タラ・レバ」の信頼です。
 
もう少し素直だったらいいのに

もう少し速ければいいのに


 「タラ・レバ」を卒業しない限り、信頼は不可能です。そして、互いの信頼関係「はげまし」の前提ですから、はげましが成立することはないのです。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 では、信頼とは「相手の欠点を見て見ぬふりすること」なのでしょうか。
 それは違います。

 「風が強く吹いている」の中で、ハイジと走が冒頭の言葉について再び会話する場面があります。
灰二と走

俺が言ったこと、覚えてるか?
「きみを信じる」と俺は言ったんだ。思い出したか?

実は、
あれは嘘だった


 ハイジが走を信じていたのは、嘘だったというわけです。
 
 しかし、これこそが、信じるということです。
 信頼とは、相手の欠点を見て見ぬふりをすることではありません。
 信頼とは、「相手の欠点を受け入れ、よい点の可能性に確信をもつ」ということなのです。

 だからこそハイジは先ほどの言葉に続いて次のように走に語りかけます。

1年間、きみの走る姿を見て、きみと過ごした今は…
走、俺にとっての最高のランナーは、きみしかいない。


 この言葉を胸に、走は、区間新記録を叩きだすのです。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 清瀬灰二は、素晴らしい教育者です。
 9人の個性的過ぎる若者の特性を見抜き、そして特長を損なうことなく導いていきます。
 この物語は、是非若い先生に読んでもらいたいです。

 他の教育に関する本に負けないくらい力と知恵をハイジが与えてくれることでしょう。
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プロフィール

山形昇平

Author:山形昇平
北海道教育大学附属札幌小学校にて11年間教員として勤務、その後北海道コンサドーレ札幌への出向を経て、現在は札幌市内教員です。学級便り・学校便りの発信、育児・子育てへの提案、運動・遊びのアイデア発信をしています。お子さんの成長の一助となれば幸いです。

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