FC2ブログ

記事一覧

12歳以上の来賓は、入場をお断り候



 久しぶりに、新しい学校便りの巻頭言を書いてみました。

 宮沢賢治の「雪渡り」を題材に、子どもの成長について書いてみました。

 子どもは未熟な大人と見る人がいます。

 でも、僕は多くの子どもを見てきて、生きている時間が短いからといって、それが未熟だとはどうしても思えないのです。

 生きている時間が短いからこそ、生まれるものがあると思うのです。

 では、本文をどうぞ。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

学校便り 未来号
12歳以上の来賓は、入場をお断り候

雪渡り2

 四郎とかん子とは小さな雪ぐつをはいてキックキックキック、野原に出ました。
 こんな面白い日が、またとあるでしょうか。
 いつもは歩けないきびの畑の中でも、すすきで一杯いっぱいだった野原の上でも、すきな方へどこ迄まででも行けるのです。


 宮沢賢治「雪渡り」の一場面です。

 「雪渡り」のあらすじを簡単に紹介しますと…
 雪がすっかり凍りついた季節、四郎とかん子は野原に遊びにゆき、狐の紺三郎に出会います。 紺三郎が二人に団子を勧めますが、かん子は思わず「キツネの団子は、兎のくそ」と失言してしまいます。 それを聞いた紺三郎は、「人間の大人こそ嘘つきだ」と主張して、それを説明するための幻燈会に二人を招待するのです。

 今の北海道が、まさに雪渡りの季節です。

 春が近づき、昼はあたたかくなってきたので、表面の雪が解け始めています。
 でも、朝晩の寒さが、その雪を再び凍らせます。
 賢治風に言うならば、「雪がすっかり凍って大理石よりも堅く」なるのです。
 今までふかふかの雪の上を、歩くことができるのは実に愉快です。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 子どもは時に、大人が踏み入れない「彼らだけの世界」に行ってしまうことがあります。
 四郎とかん子がキックキック雪の上を歩いて行ってように。


おなかすいたからお月様に
ケチャップつけて食べよーっと
スプーンですくって食べるの

残ったら、れーぞーこにいれて
凍らせてアイスにして
みんなでたべようね


 

 次女が5歳の時につぶやいた詩です。
 小さな子には、お月様はおいしそうな卵に見えるようです。
 大人の僕の目はすでにカメラに退化してしまいました。月は、地球を回る天体、事実だけを映し出す旧式のカメラです。
 彼女の潤んだ黒い瞳が羨ましく思うことがよくあります。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

這えば立て立てば歩めの親心

 子どもが這うようになれば、早く立たないかと願い、立つようになれば早く歩くようにならないかと願うのが親心。
 しかし願いこそすれ、赤ん坊に、這う方法を教えたりしないし、つかまり立ちの練習をさせたりしないものです。



 赤ちゃんが寝返りをしようとしている時に、腰を押して手伝ってあげる。これは大変なことです。つかまり立ちをした時に、両手を持って歩かせてしまう。これは最悪です。人生の中の貴重な脳の発見の時間に「ぱっと答えを教えてしまう」と脳は発見しようとするのをサボるようになります。一見、無駄なことが非常に重要な学びの場になっているのです。
【荒木秀雄 徳島大学教授の講演会から】




 でも、子どもが大きくなり、学校で勉強を始めると、願うだけでは飽き足らず「ああしろ」「こうしろ」と手が出てしまう、口が出てしまいます。何故でしょう。

 できない経験、うまくいかない経験も、大切な学びの場であることは分かっているのに…反省。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 昔話を少々。

 30年ほど前、僕は小学6年生でした。卒業の日、式を終えた6年3組の仲間と担任の先生が玄関に集まりました。最後の挨拶をするのは僕です。

 長い長い卒業式の緊張から解かれたからか男子達の顔には笑顔と冗談が溢れ、泣き止んだ女子には清清しい微笑みが見えました。
 挨拶の時が来ました。僕は「それではみなさんさようなら」、ただそう言えばよかったのです。
 期せずして、僕から飛び出たのは嗚咽と大粒の涙でした。僕とクラスの皆は大声でただただ泣き続けました。いつまでもいつまでも。




 雪渡りができるのはこの季節だけ。
 その時期を逃しては、幻燈会には行けないのです。

 子どもにとって、その時期を逃しては、決して出会えない感情がある、体験がある、成長があります。
 「大人の都合でそのタイミングを逃してはいまいか?」今一度、考えてみたいものです。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

雪渡り

 「雪渡り」の中で、紺三郎の開催した幻燈会。そのチケットには、こう書かれています。

12歳以上の来賓は、入場をお断り候

 「子どもの世界に、大人は入れませんよ」賢治の言葉が聞こえてきそうです。

 子どもの世界に入れないのなら、せめて雪渡りができるようにするための
 あったかな陽の光と時に厳しい朝夕の寒さになりたいものです。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

山形昇平

Author:山形昇平
北海道教育大学附属札幌小学校にて11年間教員として勤務、その後北海道コンサドーレ札幌への出向を経て、現在は札幌市内教員です。学級便り・学校便りの発信、育児・子育てへの提案、運動・遊びのアイデア発信をしています。お子さんの成長の一助となれば幸いです。

ファンタイムへのアクセス数